CRT(テキーラ規制委員会)が発表!2020年1月~7月のテキーラ輸出量上位10ヶ国データと最新マーケット情報

CRT(テキーラ規制委員会)が、2020年1月~7月のテキーラ輸出量上位10ヶ国データと最新のマーケット情報を発表した。

テキーラ輸出、1月から7月にかけて増加を記録。

~米国はテキーラの世界最大の市場であり、オーストラリアが主要市場仲間入り。コロナ禍にあってもテキーラは国際市場で善戦。~

出典:El Informador紙(2020年8月24日)

テキーラ業界は、今年も前年同様の生産・輸出量の確保を期待している。

コロナウイルスによる衛生・経済危機は、テキーラ生産の成長率を抑制して来た。CRTによると、今年の1月から7月までで、218.9百万ℓと、214.5百万ℓの前年同期に比べて2%の増加に留まった。
他方、輸出では、今年の同時期で、153.7百万ℓと、145.7百万ℓの前年同期に比べて5%の増加を記録した。

カテゴリー別では、「100%アガベテキーラの伸びが継続しており、輸出全体の55%を占めるようになった。」とCRTのRamón González Figueroa 総裁は語った。
テキーラは68.8百万ℓと、69.5百万ℓの前年同期に比べて1%の減少となった。

主要10カ国の構成は、米国が88%と首位に君臨し全体の構成比も2019年の83.1%から大幅にアップ、以下、ドイツ、スペイン、カナダ、フランス、オーストラリア、イギリス、ラトビア、日本、イタリアと続く。
注目すべきポイントとして、オーストラリアは2019年までランク外だったが、今回はじめて5位にランクイン。今後のマーケット拡大も注目されている。
日本は、2019年の5位から9位にランクダウンとなった。

◆2019年テキーラ輸出量上位10ヵ国データ(出典:CRT)◆

CRT総裁は、テキーラの消費量で進境著しいオーストラリアのような国々に言及し、とりわけオーストラリアはこれまで目立たない存在であったが、今年度末には250万ℓ規模の市場になるだろうと付け加えた。

コロナ禍はオンラインビジネスを牽引

テキーラの生産とメキシコ市場での販売が停滞する中、この逆境を乗り越えるためにネット販売に活路を見出したメーカーがある。
Círculo Tequila社がその一例だ。Amazon, Mercado Libreなどのサイトを利用して、販売を順調に拡大している。
「Amazon Méxicoでは、最も売れ筋の商品の中に弊社のテキーラがあり、常に数点の商品が人気の高いもの、ギフト用としてよく売れている状況で、正直驚いている。」同社のRicardo Basulto CEOは語る。そして、「Rappi(料理のデリバリーシステム)を利用しての納品は上手く行っている。」と付け加えた。

このオンライン販売の成功によって、近く自社オンラインショップを開設する方向で検討している。また、同社はデパートやワイン・リキュール専門店とも取引がある。

<解説>    
コロナ禍で産業全体に激震が走ったが、エッセンシャルな活動と分類された事でテキーラ業界は、各社がそれぞれ生産を縮小抑制しながらも生産活動を継続してきている。

この記事が示すように、生産は2%増とペースダウンを余儀無くされた。他方輸出面では、主要輸出先の多くにコロナの悪影響が強く出ているにも拘らず、7月末までで5%増というのは意味のある数字であろう。また輸出に占める100%テキーラが55%という比率は、世界市場での人気が定着拡大している証左と言えよう。

また、輸出面で非常に興味深いのは、CRT総裁が注目するオーストラリアの存在である。前年同期比で二倍以上の大躍進ぶりである。
従来、オーストラリアは主要10カ国に連なることは決してなく、その意味では意外な伏兵と言えないこともない。しかし過去の統計数値を改めて見て見ると、少なくともここ数年は11位からのグループの先頭にいて、安定した伸びを示していた事がわかる。

また、メキシコのメディアの中でも、2018年にオーストラリアのテキーラ志向に注目して今後の有望な市場への成長を予測する記事も発表されていて、今年の活躍の背景の分析が待たれる状況である。南半球はこれから春夏を迎えるという気候的な条件を踏まえると、今年は主要10カ国の仲間入りはほぼ確実と思われる。他方、主要国の多くは北半球に位置し、秋冬に差し掛かる事がコロナの状況の悪化に繋がる懸念も少なくないこともあり、今年の最終的な「番付」がどうなるか大変気になるところである。

同記事のもう一つのテーマであるオンラインストアでのテキーラ販売については、今後メキシコ市場で拡大していくであろうから、引き続き注視する必要があるだろう。

翻訳・解説:松浦芳枝