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メスカルとは

01

メスカルとは?

メキシコ最大の先住民の言語であるナワトル語の「metl:メトル(マゲイ=アガベ)」と「ixcalli:イスカリ(加熱した)」に由来する、所定の法律に定める指定産地内の野性または栽培されたアガベ(竜舌蘭)を原材料とするメキシコ原産の蒸留酒。メスカルに関するメキシコ公式規則(NOM Mezcal)の遵守を促進し、製造管理をメキシコ政府から委任された認証機関によって認証されたものだけが「メスカル」と呼ばれている。

メスカル管理認証機関

メキシコ内外でメスカルの原産地呼称を守り、製品の信頼性、トレーサビリティ、品質および持続可能性の保証を主要目的とする。以前はCRMが一元的にその任務に当たっていたが、2022年1月現在下記の5つの機関が存在する。

  • COMERCAM Consejo Mexicano Regulador de la Calidad del Mezcal メキシコメスカル品質規制委員会

    AMMA Asociación de Maguey y Mezcal Artesanal A.C. マゲイ・アルテサナルメスカル協会

  • CIDAM Centro de Innovación y Desarrollo Agroalimentario de
    Michoacán
    ミチョアカン農産加工革新開発センター 

    PAMFA Verificación y Certificación PAMFA, A.C. マゲイ・アルテサナルメスカル協会

    Certificación Mexicana PAMFA検査・認証協会

※2022年2月現在、規定の日本語名がないため暫定的な本誌訳である。

メスカル生産者は自由に認証機関を選択できることから、認証にかかる費用などでの機関間の競合が見込まれている。
なお、AMMAは2021年にCOMERCAMが分裂し、旧経営陣の多くがAMMAに合流。2021年11月に正式な認証機関として国から認定を受けた。


02

メスカルの主要規則(参考:NOM Mezcal)

  • 1

    200種類以上あるアガベの中で原材料として使われるアガベの指定はない。

  • 2

    原産地呼称で保護されたメキシコの指定産地9州で育成し成熟したアガベを使用し、製造・蒸留したものである。

    〈 メスカル原産地呼称指定9州 〉(2022年10月現在)

    オアハカ/ドゥランゴ/サカテカス/タマウリパス/グアナファト/サン・ルイス・ポトシ/ミチョアカン/ゲレーロ/プエブラ

  • 3

    原材料は100%アガベのみだが、数種類のアガベをブレンドすることができる。その場合、ラベルに配合の多い順番からアガベの種類を記載する。

  • 4

    蒸留回数の規定はない。

  • 5

    アルコール度数35%〜55%である。

  • 6

    メタノールの値は3mg/ml以下である。(無水アルコール中)

  • 7

    ボトルに、認証機関からの認証を得たメーカー、ブランド毎の13桁の数字とアルファベットから成る番号が記載されたホログラム(holograma)を添付する。


03

メスカルのカテゴリーと製法の特徴(参考:NOM Mezcal)

  • メスカル
    アンセストラル

    Mezcal Ancestral

    地中に穴を掘ってアガベ(マゲイ)を蒸し焼きにして、手作業で杵を使い加熱したアガベを粉砕。
    動物の皮、石、土、木の幹や、素焼きの瓶、木や粘土の桶などで発酵させ、素焼きの瓶で蒸留するなど、伝統的な製法で造られたメスカル。
    2019年のシェアは0.7%。

  • メスカル
    アルテサナル

    Mezcal Artesanal

    一般的に、地中に穴を掘ってアガベ(マゲイ)を蒸し焼きにし、石臼(タオナ)を使ってアガベを搾汁。酵母を使わず木樽で自然発酵させ、粘土や銅製の釜で蒸留するメスカル。
    蒸留器にアガベを搾った後の繊維(バガス)を入れる場合もある。クラフト感を残しつつ、安定供給のできる輸出メスカルブランドの主柱となっている。
    2019年には、メスカル全体の89.9%を占める。

  • メスカル

    Mezcal

    圧力釜で蒸したアガベをシュレッダーで搾汁し、ステンレスタンクで発酵させる。
    その後、銅製またはステンレス製の蒸留器で工業的に大量生産されるメスカル。
    2019年のシェアは9.4%。

Mezcal Industrial(メスカル インドゥスリアル)の用語は非公式に使われることもあるが、法律上は正式な表現ではない。NOM Mezcalでは「メスカル」という用語が正式に用いられる。


04

メスカルのクラス(参考:NOM Mezcal)

熟成(樽・ガラス容器)の期間と製法の特徴によって6つのクラスに分類される。

メスカルにはエクストラアニェホのクラスはありません。

CLASS

1

ブランコ/ホベン

Blanco/Joven

樽熟成期間: 0~2ヶ月未満
クラス別では88.2%(2019年)のシェア。

CLASS

2

レポサド

Reposado

樽熟成期間: 2ヶ月以上1年以内
樽の容量規定: 無し
光量・温度・湿度の安定した場所で熟成。

CLASS

3

アニェホ/アネホ

Añejo

樽熟成期間: 366日以上(1年を上回る)
樽の容量規定: 1,000ℓ未満
光量・温度・湿度の安定した場所で熟成。

CLASS

4

マドゥラド・エン・ビドゥリオ

Madurado en Vidrio

光量・温度・湿度の安定した暗所で1年以上ガラス製の瓶または容器で熟成するもの。結婚式、誕生日など慶事に飲まれることが多い。

CLASS

5

アボカド・コン

Abocado Con

グサノや果物、ハーブ、蜜、香料などを加えて製造するもの。この場合はどのクラスでも可能である。ラベルに"Con Gusano"、"Con Chile"など、加えられた材料が表記される。

CLASS

6

デスティラド・コン

Destilado Con

蒸留の際のメスカルを風味づけしたもの。鶏・七面鳥・ウサギの胸肉(ペチューガ)や果物、トウモロコシのひげなどを蒸留器内に吊るして蒸留する。ブランコのみ対象となり、同一カテゴリーのブレンドが可能。


05

テキーラとメスカルの主要な相違点

原材料

カテゴリー

製法

生産地

法律(現行) メキシコ公式規則

テキーラ

Tequila

アガベアスルのみ

100%アガベテキーラと
テキーラの2種類

産業ベースでの
大量生産が主流

5州

NORMA OFICIAL MEXICANA
NOM-006-SCFI-2012

メスカル

Mezcal

指定産地内の
全てのアガベ

100%アガベのみ

手作業による
少量生産が多い

9州

NORMA OFICIAL MEXICANA
NOM-070-SCFI-2016

06

2019年メスカルマーケット(出典:CRM)

CRM解体後データが削除されたため2020年以降のデータを確認することはできません。

  • ブランド数

    277

    (68カ国で販売)

    生産量

    714万ℓ

    (2018年は508万ℓ)

    ※蒸留所数のデータはCRMから公表されていない。

    生産量 州別構成比 原料別 シェア
  • 輸出量
メスカル

“Para todo mal, mezcal, para todo bien, también.”
「辛いときにメスカル、嬉しいときもメスカル。」 メスカル

1875年設立のメキシコ言語アカデミーでは、テキーラではなくメスカルのことわざとして紹介されている。その他、テキーラでは収穫する人を「ヒマドール」と呼ぶがメスカルの場合は「コルタドール」、アガベを「マゲイ」、蒸留所を「パレンケ」と呼ぶことが多い。


07

メスカルの飲み方

メスカルの飲み方

メキシコ最大の先住民の言語であるナワトル語の「metl:メトル(マゲイ=アガベ)」と「ixcalli:イスカリ(加熱した)」に由来する、所定の法律に定める指定産地内の野性または栽培されたアガベ(竜舌蘭)を原材料とするメキシコ原産の蒸留酒。メスカルに関するメキシコ公式規則(NOM Mezcal)の遵守を促進し、製造管理をメキシコ政府から委任された認証機関によって認証されたものだけが「メスカル」と呼ばれている。


08

一般的なメスカルの製法

  • 栽培
    1 栽培

    野生種だけでなく種から苗を育てたり、アガベの若芽(ブルビロ)または子株(イフエロ)を畑に移植して栽培する。
    エスパディンの場合は、雨季が始まる前の4月~5月の間にイフエロの移植を行う。単作以外にトウモロコシや豆を間作することもある。栽培地の状況にもよるが、イフエロの場合は1.5m〜2mの間を空けて15cm〜20cmの深さで植えるのが望ましい。

  • 収穫
    2 収穫

    成熟したアガベは、鎌(マチェテ)や半円または半月型のコアまたはタレクア(Tarecua:ゲレーロ州での呼び名)という収穫専用の農具とハンマーなどを使って、葉と根を完全に切り落としてピニャを取り出す。
    ピニャは大きさに応じて二つまたは四つ割にして、トラックの荷台やロバなどの背に乗せて蒸留所(パレンケ)まで運ぶ。

  • 加熱
    3 加熱

    地中に掘った穴で加熱した石の上にピニャを並べ、土やアガベ・バナナの葉、搾汁後のアガベの繊維(バガス)などで蓋をして蒸し焼きにする伝統的な製法(タテマド)が一般的。薪の上に石を置くことで、火が直接ピニャに触れないようにする。マンポステラやアウトクラベを使う蒸留所もある。
    加熱の際の煙が、メスカル特有のスモーキーな香りを生み出す。

  • 搾汁
    4 搾汁

    加熱したアガベは斧などを使って細かくしてから、ロバやラバによる牽引または電動による回転式の石臼(タオナ)を使って、アガベの繊維を砕いて発酵用のモストを得る。
    カノア(カヌー)と呼ばれる木製または地面に掘った石の臼にピニャを入れて、大槌(マソ)で粉砕する伝統的な製法や、シュレッダー、粉砕機、プレス機などを使用する蒸留所もある。

  • 発酵
    5 発酵

    木製の発酵槽、石の穴や木の幹をくり抜いたもの、ステンレス製または粘土の容器、動物の皮などの中に入れて数日かけて自然発酵させる。搾汁後のアガベの繊維(バガス)を入れたり、発酵期間中、木の棒などでかき混ぜて発酵を促進する蒸留所もある。発酵日数は気候によって変動する。発酵が終わった液体を「テパチェ(Tepache)」と呼ぶ。

  • 蒸留
    6 蒸留

    テパチェを粘土製の蒸留器で直火蒸留したり、銅製またはステンレス製の蒸留器で蒸留する。蒸留回数に制限はない。
    蒸留器の中にバガスを一緒に入れるブランドや、蒸留後のメスカルを樽や瓶で熟成するブランドもある。

  • 度数調整
    7 度数調整

    度数の違う同じクラスのメスカルをブレンドしてアルコール度数の調整をする。原酒を竹のような筒を通してヒカラに注ぎ、発生する泡の大きさや泡が消える速度で度数や品質を判断する。
    加水をして度数を調整するブランドもある。

  • ろ過・ボトリング
    8 ろ過・ボトリング

    度数調整したメスカルをフィルターに通し、固形物などの不純物を取り除いた後ボトリングをする。ボトリングは手作業の蒸留所もあれば半自動で行う蒸留所もある。
    国内市場向けには、ボトリングをせずペットボトルやポリタンクに詰めて販売する蒸留所(生産者)もある。

MEZCAL MAP 2022

原産地呼称保護地域への編入を申請しているシナロア州については、2021年10月の連邦政府による認可を巡り訴訟が起きており、連邦裁判所の最終判断が待たれる。また先に編入申請をしていたモレロス、アグアスカリエンテス、メキシコの3州は既に敗訴判決が出ている。
※2019年の時点で963ヶ所の市町村でメスカルが造られている。

2021年のメスカルランキング
(出典:Drinks International Annual Brands Report 2022)
BESTSELLING BRANDS 2021
  • 1Del Maguey

    2Montelobos

    3Alipus

    4Siete Misterios

    5Casamigos

  • 6Bruxo

    7Derrumbes

    8Ilegal

    9Koch

    10Mezcal Vago

BESTSELLING BRANDS 2021
  • 1Del Maguey

    2Siete Misterios

    3Alipus

    4Casamigos

    5Montelobos

  • 6Bruxo

    7Derrumbes

    8Los Danzantes

    9Marca negra

    10Quiquiriqui

サン・ルイス・ポトシ州
タマウリパス州

代表的なアガベの種類

*上:一般名/下:学名

  • エスパディン Espadín

    Agave Angustifolia Haw:アガベ アングスティフォリア ホー

    メスカルの原料として最も広く利用されている。
    アガベアスルの祖先でもある。細長い葉をつける。

  • テペスタテ Tepextate

    Agave Marmorata:アガベ マルモラタ

    「山」という意味のナワトル語に語源を持ち、石の上にも育つことができる。野生では25年くらいにもなる長寿のアガベ。

  • トバラ Tobalá

    Agave Potatorum:アガベ ポタトルム

    「芳香のマゲイ」という意味のサポテカ語で、石と粘土の土地に育つ。バラを彷彿とさせる葉形も美しい。

  • セニソ Cenizo

    Agave Durangensis:アガベ ドゥランヘンシス

    ドゥランゴ州産限定。灰色がかった緑色をしている。
    全長2mに達することも少なくない。

  • パパロテ Papalote

    Agave Cupreata:アガベ クプレアタ

    ゲレーロ州、ミチョアカン州を通り太平洋に注ぐバルサス川の盆地の固有種。ナワトル語で「蝶々」を意味する。

  • シエラネグラ Sierra Negra

    Agave Americana subsp. Oaxacensis
    :アガベ アメリカナ スブスプ オアハセンシス

    アガベアメリカナの亜種。成熟に25年も要することがある希少なアガベ。黒色(negro)の棘がある。

  • クイシェ Cuishe/Cuixe

    Agave Karwinskii:アガベ カルウィンスキー

    地域や先住民言語、アガベの大きさ太さなどの違いによって、Tobasiche、Madrecuixe、Barril、Cirial、Bicuixe、Largoなどの一般名がある。オアハカ及びプエブラ南部の限られた地域の固有種。

  • プルケロ Pulquero

    Agave Salmiana:アガベ サルミアナ
    Agave Atrovirens:アガべ アトロビレンス

    メキシコ中央部及び南東部の固有種。先住民時代からプルケを造るために栽培されてきた。征服者エルナン・コルテスが、スペイン国王カルロス5世への書簡の中でこのアガベについて言及している。

  • ハバリ Jabalí

    Agave Convallis:アガベ コンバリス

    オアハカの固有種。サポニンを多く含むため、発酵や蒸留時に発生する大量の泡を処理する技量が必要である。基本的には野生種として利用されているが、最近では栽培も始まっている。

  • レチュギジャ Lechuguilla

    Agave Inaequidens:アガベ イナエキデンス

    メキシコ中央部の玄武岩の傾斜地で、松とオークの林の間の空間に分布が限定している。葉と葉の間が均等ではないため、「不揃いの歯」というラテン語に由来する学名である。

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