メスカルの製法

栽培Planting and Growing of Agaves

種から苗を育てたり、アガベの若芽(ブルビロ)または子株(イフエロ)を畑に移植して栽培する。80%以上のメスカルの原材料として使われるエスパディンを始め、一般的には雨季が始まる前の4月~5月の間にイフエロの移植を行う。単作以外にトウモロコシや豆を間作することもある。栽培地の状況にもよるが、イフエロの場合は1.5~2mの間を空けて15~20cmの深さで植えるのが望ましい。アガベの茎の部分(キオテ)は、伸びて花が咲く前にカットされる場合と、アガベの子株を育てるためにそのまま育成される場合がある。メスカルでは、異なる種類のアガベの同士の交配が可能なため、1つのキオテから多種類のアガベの若芽が生えてくる場合もあり、子株の畑では異なった種類のアガベが一緒に育てられている。

アガベの子株畑
アガベの子株畑
畑に移植する前の子株
畑に移植する前の子株
アガベの子株(イフエロ)
アガベの子株(イフエロ)

収穫Harvesting / Corta(Jima)

成熟したアガベは、鎌(マチェテ)や半円または半月型のコアまたはタレクア(Tarecua:ゲレーロ州での呼び名)という収穫専用の農具とハンマーなどを使って、アガベの葉と根を完全に切り落として球形部(ピニャ)を取り出す。
メスカルのアガベを収穫する人は「コルタドール」、アガベは「マゲイ」と呼ばれる場合が多い。野生種のアガベの場合は、1株収穫したら2~3株の子株を植えるなどその土地のルールにしたがって収穫を行う。栽培年数やサイズ、糖度はアガベの種類によって異なる。ピニャは大きさに応じて二つまたは四つ割にして、トラックの荷台やロバなどの背にのせて蒸留所まで運ぶ。蒸留所でピニャをカットするところもある。蒸留所を「パレンケ」と呼ぶことが多い。

トラックからピニャを下す作業
トラックからピニャを下す作業
野生種のアガベの収穫
野生種のアガベの収穫
収穫作業
収穫作業

加熱Cooking

地中に掘った穴の中に薪を入れて石を焼き、加熱した石の上にピニャを並べ、土やアガベ・バナナの葉、搾汁後のアガベの繊維(バガス)などで蓋をして蒸し焼きにする伝統的な製法(タテマド)が一般的。薪の上に石を置くことで、火が直接ピニャに触れないようにする。マンポステリアやアウトクラベを使う蒸留所もある。加熱の際の煙による独特のスモーキーさがないメスカルを造るため、煙の少ないオーク材の薪を使って加熱するブランドも増えている。タテマドとは、ナワトル語のTatemar(火にかける)という意味から派生している。オルノ・デ・ピエドラ、オルノ・デ・バホ・ティエラと呼ぶこともある。

ピニャの上にバガスをのせる作業
ピニャの上にバガスをのせる作業
タテマド
アウトクラベ

搾汁Crushing and Extraction

加熱したアガベは斧などを使って細かくしてから、ロバやラバによる牽引または電動による回転式の石臼(タオナ)を使って、アガベの繊維を砕いて発酵用のモストを得る。牛がタオナをひくブランドもある。 カノア(カヌー)と呼ばれる木製または地面に掘った石の臼にピニャを入れて、大槌(マソ)で粉砕する伝統的な製法や、シュレッダー、粉砕機、プレス機などを使用する蒸留所もある。

大槌でアガベを粉砕
大槌でアガベを粉砕
野生種のアガベの収穫
タオナ
電動式タオナ
電動式タオナ

発酵Fermentation

木製の発酵槽、石の穴や木の幹をくり抜いたもの、ステンレス製または粘土の容器、動物の皮などの中に入れて数日かけて自然発酵させる。搾汁後のアガベの繊維(バガス)を入れ、発酵期間中、木の棒などでかき混ぜて発酵を促進する。発酵日数は気候によって変動する。発酵が終わった液体を「テパチェ(Tepache)」と呼ぶ。

木製の醗酵槽
木製の醗酵槽
牛革の発酵槽
牛革の発酵槽

蒸留Distillation

テパチェを銅製またはステンレス製の蒸留器で蒸留する。粘土製の蒸留器で直火蒸留するブランドもある。蒸留回数に制限はない。一般的には蒸留器の中にバガスを一緒に入れることが多い。蒸留後のメスカルを樽や瓶で熟成するブランドもある。ディスティラド・コンのクラスは、蒸留器の中に鶏・七面鳥・ウサギなどの胸肉(ペチューガ)や果物などを吊るして蒸留する。蒸留後にオーク樽によって熟成させるブランドもある。

粘土製の蒸留器
粘土製の蒸留器
銅製の蒸留器
銅製の蒸留器

度数調整Ajustment of the Alcoholic Content

加水または、度数の違う同じクラスのメスカルをブレンドしてアルコール度数の調整をする。小規模蒸留所・少量生産のブランドでは、原酒を竹のような筒を通してヒカラに注ぎ、発生する泡の大きさや泡が消える速度で度数や品質を判断する伝統的な手法を使用する場合もある。

泡のサイズや消える速度を確認
泡のサイズや消える速度を確認

ボトリングBottling

度数調整したメスカルをフィルターに通し、固形物などの不純物を取り除いた後、メスカルまたは水(本来メスカルが望ましい)で内側を洗浄したボトルに充填する。ボトリングは手作業の蒸留所もあれば半自動で行う蒸留所もある。国内市場向けには、ボトリングをせずペットボトルやポリタンクに詰めて販売する蒸留所(生産者)もある。

ボトルを洗浄
ボトルを洗浄
ボトリング工場での作業
ボトリング工場での作業
ラベル貼り
ラベル貼り
手作業でボトリング
手作業でボトリング
一般的なフィルター
一般的なフィルター
フィルター
フィルター

メスカルの飲み方

メキシコ内外でメスカルの原産地呼称を守り、製品の信頼性、トレーサビリティ、品質および持続可能性の保証を主要目的とする。以前はCRM(メスカル規制委員会)が一元的にその任務に当たっていたがメキシコでは、基本的にはストレートで飲まれている。原材料のアガベの種類による香りや味わいの違い、またブランドによっては独特なスモーキーな香りを楽しむために、ゆっくりと味わうことが推奨されている。オレンジスライスとチリソルトやグサノソルト(芋虫の塩)を添える場合もある。2023年1月現在、下記の5つの機関が存在する。

メスカル用のグラス

ベラドラ
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Veladora</label>ベラドラ

本来は礼拝時などに使用されていたろうそくを入れる容器。テキーラ用のカバジートに比べて口径が若干広く、丈が短く作られた最も一般的なメスカル用グラス。

ヒカラ
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Jícara</label>ヒカラ

Tecomate(テコマテ)という果実の中身をくり抜いて作るか、または粘土で作る丸い容器。伝統的な飲み方として使用する場合や、ロゴ入りのものをプロモーションとして使用するブランドもある。

メスカルカクテル

メスカリータ

「マルガリータ」のメスカルバージョン。グサノソルトでスノースタオイルにする場合もある。

メスカル・ミュール

メスカルをジンジャーエールで割った、「モスコミュール」のメスカルバージョン。

メスカル・パロマ

テキーラとグレープフルーツジュース、ソーダで作る定番カクテルのメスカルバージョン。

メスカル・ネグローニ

ジンとスイートベルモット、カンパリを使ったクラシックカクテル「ネグローニ」のメスカルバージョン。

メスカル・オールドファッションド

ウイスキーに角砂糖、アロマティックビターズの苦味を加えた定番人気カクテルのメスカルバージョン。

代表的なアガベの種類

<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Espadín</label>エスパディン
エスパディン
アガベ アングスティフォリア ホー
メスカルの原料として最も広く利用されている。アガベアスルの祖先でもある。細長い葉をつける。
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Tepextate</label>テペスタテ
テペスタテ
アガベ マルモラタ
「山」という意味のナワトル語に語源を持ち、石の上にも育つことができる。野生では25年くらいにもなる長寿のアガベ。
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Tobalá</label>トバラ
トバラ
アガベ ポタトルム
「芳香のマゲイ」という意味のサポテカ語で、石と粘土の土地に育つ。バラを彷彿とさせる葉形も美しい。
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Cenizo</label>セニソ
セニソ
アガベ ドゥランヘンシス
ドゥランゴ州産限定。灰色がかった緑色をしている。全長2mに達することも少なくない。
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Papalote</label>パパロテ
パパロテ
アガベ クプレアタ
ゲレーロ州、ミチョアカン州を通り太平洋に注ぐバルサス川の盆地の固有種。ナワトル語で「蝶々」を意味する。
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Sierra Negra</label>シエラネグラ
シエラネグラ
アガベ アングスティフォリア ホー
メスカルの原料として最も広く利用されている。アガベアスルの祖先でもある。細長い葉をつける。
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Cuishe/Cuixe</label>クイシェ
クイシェ
アガベ カルウィンスキー
地域や先住民言語、アガベの大きさ太さなどの違いによって、Tobasiche、Madrecuixe、Barril、Cirial、Bicuixe、Largoなどの一般名がある。オアハカ及びプエブラ南部の限られた地域の固有種。
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Pulquero</label>プルケロ
プルケロ
アガベ サルミアナ/アガべ アトロビレンス
メスカルの原料として最も広く利用されている。アガベアスルの祖先でもある。細長い葉をつける。
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Jabalí</label>ハバリ
ハバリ
アガベ コンバリス
オアハカの固有種。サポニンを多く含むため、発酵や蒸留時に発生する大量の泡を処理する技量が必要である。基本的には野生種として利用されているが、最近では栽培も始まっている。
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Lechuguilla</label>レチュギヤ
レチュギヤ
アガベ イナエキデンス
メキシコ中央部の玄武岩の傾斜地で、松とオークの林の間の空間に分布が限定している。葉と葉の間が均等ではないため、「不揃いの歯」というラテン語に由来する学名である。
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Maguey<br>Lechuguilla</label>マゲイレチュギヤ
マゲイレチュギヤ
アガベ アングスティフォリア ホー
メスカルの原料として最も広く利用されている。アガベアスルの祖先でもある。細長い葉をつける。
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Mexicano</label>メヒカノ
メヒカノ
アガベ ロダカンサ
別名マゲイメヒカノなど。山麓で有機栄養分に富む浅い土壌を好む。一株には幅の狭い100枚以上の濃い緑の葉をつける。
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Agave Azul</label>アガベ アスル
アガベ アスル
アガベ テキラナ
このアガベにはクリオージョなどの変種があるが、テキーラ製造には、アスル変種の使用が普通。メルカルでも一般的に使われている。
<label class="text-docktrin font-color-mezcal-red">Arroqueño/<br>Coyote</label>アロケニョ/コヨテ
アロケニョ/コヨテ
アガベ アングスティフォリア ホー
真っ直ぐに伸びる非常に長い葉は、表面を覆う蝋によって白みを帯びた緑色をしている。絶滅が危惧される種類。
アガベの若芽
アガベの若芽
アガベの茎(キオテ)
アガベの茎(キオテ)
アガベの種
アガベの種