メスカルってどんなお酒?

メスカルってどんなお酒?

メキシコ最大の先住民の言語であるナワトル語の「metl:メトル(マゲイ=アガベ)」と「ixcalli:イスカリ(加熱した)」に由来する、所定の法律に定める指定産地内の野性または栽培されたアガベ(竜舌蘭)を原材料とするメキシコ原産の蒸留酒。

メスカルに関するメキシコ公式規則(NOM Mezcal)の遵守を促進し、製造管理をメキシコ政府から委任された認証機関によって認証されたものだけが「メスカル」と呼ばれている。

メスカルの原産地呼称

メスカル原産地呼称指定9州
メスカルの原産地呼称
*原産地呼称指定年&市町村数

2023年1月現在、メキシコの9州(オアハカ、ドゥランゴ、サカテカス、ゲレーロ、サン・ルイス・ポトシ、タマウリパス、グアナファト、ミチョアカン、プエブラ)がメスカルの原産地呼称として保護され、964ヶ所の市町村でメスカルが造られている。

原産地呼称保護地域への編入を申請しているシナロア州については、2021年10月の連邦政府による認可を巡り訴訟が起きており、連邦裁判所の最終判断が2023年1月時点で結審していない。

原産地呼称対象州であっても、指定市町村以外で作られるものは「メスカル」ではなく「リコール(デスティラード)デ アガベ」となる。

メスカルの主要機関

CIDAM
ミチョアカン農産加工革新開発センター

Centro de Innovación y Desarrollo Agroalimentario de Michoacán

PAMFA
PAMF検査・認証協会

Verificación y Certificación PAMFA, A.C.

Certificación mexicana, S.C.
メキシコ認証協同組合

その他メスカルの団体

CANAIMEZ<br><small class="font-color-black">全国メスカル産業会議所</small>

CANAIMEZ
全国メスカル産業会議所

Cámara Nacional del la Industria del Mezcal A.C.

1997年に創設されて以来、活動を展開しているメスカルの最大手認証機関。オアハカに本部があり、その他指定8州内に事務所を構える。

Clúster Mezcal Oaxaca<br><small>クラスター メスカル オアハカ</small>

Clúster Mezcal Oaxaca
クラスター メスカル オアハカ

2018年7月に創設。オアハカ州内の政府、企業と学術団体の連携により州内品目の効率的な生産を目標にする組織に含まれ、メスカル文化のより深く広い普及を目指す。

メスカルの主要規則

  1. 200種類以上あるアガベの中で原材料として使われるアガベの指定はない。
    実際には約50種類のアガベが使われている。
  2. 原産地呼称で保護されたメキシコの指定産地9州で育成し成熟したアガベを使用し、製造・蒸留したものである。
  3. 原材料は100%アガベのみだが、数種類のアガベをブレンドすることができる。
    その場合、ラベルに配合の多い順番からアガベの種類を記載する。
  4. 蒸留回数の規定はない。
  5. アルコール度数35%~55%である。
  6. メタノールの値3mg/ml以下である。(無水アルコール中)
  7. ボトルに、認証機関からの認証を得たメーカー、ブランド毎の13桁の数字とアルファベットから成る番号が記載されたホログラム(holograma)を添付する。

“Para todo mal, mezcal, para todo bien, también.”
「辛いときにメスカル、嬉しいときもメスカル。」

1875年設立のメキシコ言語アカデミーでは、テキーラではなくメスカルのことわざとして紹介されている。

メスカルのカテゴリーとクラス

メスカルのカテゴリー

熟成(樽・ガラス容器)の期間と製法の特徴によって6つのクラスに分類される。

Mezcal
Artesanal

メスカルアルテサナル

一般的に、地中に穴を掘ってアガベ(マゲイ)を蒸し焼きにし、回転式の石臼(タオナ)を使ってアガベジュースを搾汁。酵母を使わず木樽で自然発酵させ、粘土や銅製の蒸留器で蒸留するメスカル。蒸留器にアガベを搾った後の繊維(バガス)を入れる場合もある。クラフト感を残しつつ、安定供給のできる輸出用メスカルブランドの主柱となっている。2021年には、メスカル全体の88.92%を占める。

Mezcal
Ancestral

メスカルアンセストラル

地中に穴を掘ってアガベ(マゲイ)を蒸し焼きにし、手作業で杵を使い加熱したアガベを粉砕。動物の皮、石、土、木の幹や、素焼きの瓶、木や粘土の桶などで発酵させ、素焼きの瓶で蒸留するなど、伝統的な製法で造られたメスカル。2021年のシェアは0.59%。

Mezcal

メスカル

圧力釜やレンガ釜で蒸したアガベ(マゲイ)をシュレッダーで搾汁し、ステンレスタンクで発酵させる。その後、銅製またはステンレス製の蒸留器で蒸留し、工業的に大量生産されるメスカル。2021年のシェアは10.49%。

※2021年のデータはCOMERCAMから発表されています。

Mezcal Industrial(メスカル インドゥスリアル)の用語は非公式に使われることもあるが、法律上は正式な表現ではない。NOM Mezcalでは「メスカル」という用語が正式に用いられる。

メスカルのクラス

熟成(樽・ガラス容器)の期間と製法の特徴によって6つのクラスに分類される。

ブランコ/ホベン

BLANCO / SILVER

  • 樽熟成期間 : 0~2ヶ月未満

無色透明なメスカルで、アルコール度数調整のみ可能。クラス別では99.37%(2021年)のシェア。

レポサド

Reposado

  • 樽熟成期間 : 2ヶ月以上1年以内
  • 樽の容量規定 : 無し

光量・温度・湿度の安定した場所で熟成。

アニェホ/アネホ

Añejo

  • 樽熟成期間 : 366日以上(1年を上回る)
  • 樽の容量規定 : 1,000ℓ未満

光量・温度・湿度の安定した場所で熟成。

マドゥラド・エン・ビドゥリオ

Madurado en Vidrio

地下または光量・温度。光量・温度・湿度の安定した暗所で1年以上ガラス製の瓶または容器で熟成するもの。
結婚式、誕生日など慶事に飲まれることが多い。アルコールが落ち着きまろやかな味わいになる。

アボカド・コン

Abocado Con

芋虫(グサノ)や果物、ハーブ、蜜、香料などを加えて製造するもの。この場合はどのクラスでも可能である。
ラベルに"Con Gusano"、"Con Chile"など、加えられた材料が表記される。

デスティラド・コン

Destilado Con

蒸留の際のメスカルを風味づけしたもの。鶏・七面鳥・ウサギの胸肉(ペチューガ)や果物、トウモロコシのひげなどを蒸留器内に吊るして蒸留する。ブランコのみ対象となり、同一カテゴリーのブレンドが可能。

メスカルにはエクストラアニェホのクラスはありません。

メスカルとテキーラの主要な相違点

原材料カテゴリー製法生産地法律(現行)メキシコ公式規則
テキーラアガベアスルのみ100%アガベテキーラと
テキーラの2種類
産業ベースでの
大量生産が主流
5州NORMA OFICIAL MEXICANA
NOM-006-SCFI-2012
メスカル指定産地内の全ての
アガベ
100%アガベのみ手作業による
少量生産が多い
9州NORMA OFICIAL MEXICANA
NOM-070-SCFI-2016

2022年メスカルマーケット

TOP SELLING BRANDS

Del Maguey
Siete Misterios
Montelobos
Ilegal Mezcal
Unión
Bruxo
Alipus
Amores
Los Danzantes
Koch

TOP TRENDING BRANDS

Siete Misterios
Del Maguey
Montelobos
Bruxo Mezcal
Vago
Casamigos
Clase Azul
Los Danzantes
San Cosme
Alipus

〈 出典:Drinks International Annual Brands Report 2023 〉

なぜメスカルのボトルには芋虫(グサノ)が入っているの?
グサノデマゲイをメスカルに入れる「習慣」は1940年代に遡り、オアハカ州のサンティアゴ・マタトランが産地として有名である。グサノを入れることで「独特の味」をメスカルにもたらすこと、そして、味わう前にテキーラとの視覚的な区別が可能になり、特に国際市場でメスカルの知名度が高まることにもなったと考えられる。