インタビュー <テキーラ業界で働く人々Vol.4>「オルメカ」「オルメカ アルトス」のマスターディスティラーが語るブランドのこだわりと蒸留所の現状 2021/09/16 667 X Facebook Hatena LINE テキーラジャーナルでは、2021年7月25日~8月9日に実施した読者アンケートでいただいた沢山のリクエストにお応えして、メキシコをはじめ世界中の「テキーラ業界で働く人々」にフィーチャーしたインタビュー企画をスタートしました。 第4回目は、「Olmeca(オルメカ)」及び「Olmeca Altos(オルメカ アルトス)」のマスターディスティラーJesus Hernandez(ヘスス・ヘルナンデス)氏に、ブランドのこだわりや蒸留所の現状についてインタビューさせていただきました。 TEQUILA JPURNAL(以下TJ): ヘススさんは、具体的にどのようなお仕事をしていますか? Jesus Hernandez(以下ヘスス):私の今の仕事上の役割は、テキーラ「Olmeca(オルメカ)」及び「Olmeca Altos(オルメカ・アルトス)」 の品質と特徴の維持に資することです。私は作業チームに在籍して、新製品の開発で何か問題が生じた時などのトラブルシュートに当たっています。 TJ: マスターディスティラー(蒸留責任者)にはどうしたらなれますか?何か特別に必要なスキルなどはありますか? ヘスス: マスターディスティラーになるためには長年の経験が必要です。私の場合はスピリッツ製造業界で20年以上働いて、初めてマスターディスティラーに任命されました。 重要なスキルは、アロマとティストに対する感性を持ち、テイスティングの実践経験が豊富であることは言うまでもありません。さらに、製造工程に関する知識とデータ点検も、テキーラの製造工程での変化に関する重要な全ての変数を理解する上で必要です。 TJ: ブランドについてお聞きしたいと思います。ブランドの特徴や誕生のストーリーを教えてください。 ヘスス: Olmeca(オルメカ)は、テキーラが世界中で知られる遥か前の1967年に創設されました。このブランドは数の市場に導入され、2001年までには30ヵ国以上で販売されていました。 2002年のPernod Ricard社による取得の後は、ブランドは更に存在感を高め、ヨーロッパ、ロシア、南アフリカ、トルコなどでトップセラー商品となっています。 他方、Olmeca Altos(オルメカ・アルトス)が市場へ最初に導入されたのは2009年でした。 開発方法は、それまで私が関わってきた全てのテキーラとは異なり、二人の著名な在ロンドンのミクソロジストであるHenry Basant(ヘンリー・ベサント)とDre Masso(ドレ・マッソ)との共同開発となりました。HenryとDreの示した着眼点は、世界中のバーテンダーやミクソロジストから高評価を得られるテキーラの特徴を作り出す上で決定的でした。 TJ: オルメカ・アルトスはタオナラインとシュレッダーラインの両方を使っていますが、それぞれの味わいや製法の特徴を教えてください。 ヘスス: Olmeca Altos(オルメカ・アルトス)のアロマとフレーバーのユニークな組み合わせを作り出す目的で、二種類の100%アガベテキーラ用に二つの製造方法を使用しました。 一つ目は、「タオナ」いう火山石の車輪状の挽き臼を利用して加熱したアガベを潰してられたジュースを、アガベの繊維と一緒に発酵・蒸留します。タオナを用いたテキーラは、ソフトな柑橘系のアロマと豊かにして複雑なフレーバーを持ち、口当たりは非常にソフトでクリーミーです。 もう一つの方法では、ローラーミル(シュレッダー)によって加熱したアガベを搾汁して、アガベの繊維は入れずに糖分を含んだジュースだけを発酵・蒸留します。 私たちは、アガベから最大限のアロマとフレーバーを引き出す目的で、アガベが特定の加水分解率を得るようにオーブンでゆっくりと加熱します。発酵では自社培養酵母を使いますが、それは弊社ブランドの真骨頂です。 そして、蒸留時に銅製の単式蒸留器を使用することで、テキーラに最良のフレーバーを与えて、ピリッとした引き締め感を選び出します。 TJ: テキーラ業界でも最近話題になっているサスティナビリティへの取り組みや「タオナソサイエティ」の活動について教えてださい。 ヘスス: 弊社の蒸留所は、製造用の水とエネルギーの使用量削減方法を求めて常に取り組んでおります。生産データを毎月点検し、過去数年で25~30%の削減に成功しました。 段ボール、ガラス類や包装用ラップのような固形廃棄物の99%をリサイクルしています。 Tahona Society(タオナソサイエティ)のコンペティション(注釈*)では、毎回バーとレストランによる環境インパクトの低減に向けた新たなアイデアと、そこで働く人々の生活の質的向上のためのアイデアを積極的に創出することに主眼を置いています。 TJ: 蒸留所で働く方々について教えてださい。 ヘスス: 蒸留までの作業で10の異なった役割と、ボトリング作業で8つの役割があり、現在196人のスタッフが働いています。 蒸留所は週6日・1日3シフトで操業されており、作業者たちは週に6回8時間労働のシフト勤務をします。 非番の作業者たちはメキシコの二大スポーツのサッカーと野球をします。彼らの多くは、家族と一緒に農村生活を楽しんでいて、馬、牛や鶏を飼っている場合もあるでしょう。 TJ: 昨年、蒸留所内にホテルがオープンしたとお聞きましたが、ホテルのことを教えてください。また、蒸留所ツアーの再開の予定はありますか? ヘスス: ビジターセンターをリフォームして、キッチン、ダイニングルームと研修エリア付きの部屋を用意し、20人まで滞在することができる施設ができました。今年の10月~11月頃までに、このビジターセンターを再開する方向で調整しています。 これまでは、ZOOMや他の手段を使ってオンラインセミナーやテイスティングのセッションを実施してきています。 TJ: テキーラ業界の現状を教えてください。 ヘスス: テキーラ産業は、伝統的製造方法をより重視する高品質のテキーラ作りに特に留意しながら成長を続けていくでしょう。パンデミックによってテキーラ地区への訪問者が激減しました。 TJ: コロナ禍でも、テキーラは日常的に楽しまれていたとお聞きましたが、メキシコで人気のテキーラの飲み方を教えて下さい。 ヘスス: 自分で簡単に作れるロングカクテルが定番で、作業者の間では「パロマ」がとても人気があります。 他にも、チャロネグロ(テキーラコーラ割りにライムとお塩を入れたもの)や、カバジートでストレートのまま飲むこともあります。 TJ: テキーラを飲む時に、おすすめのメキシコ料理はありますか? ヘスス: ハリスコ州でテキーラと組み合わせる料理と言えば、ビリア(Birria;低温でゆっくりと焼いた山羊肉を唐辛子入りのトマトソースで煮た料理)とカルニータス(Carnitas:豚肉を油でじっくりと煮込んだ料理)が浮かんできます。 TJ: 蒸留所の近くに有名なカルニータスのレストランがありますね!Pernod Ricard蒸留所ツアーの際には、ビジターの皆さんとOlmeca Altosと一緒にカルニータスを楽しまれていたのを覚えています。 最後に、日本の皆様のメッセージをお願います。 ヘスス: 私は残念なことに(まだ)日本にお邪魔したことがないのですが、日本の皆様は、とりわけ丁寧に作られた食べ物や飲み物を楽しまれていると伺っています。 テキーラをつくるには、7年以上をかけて育てたアガベを、アロマとフレーバーの点で世界の他のスピリッツとはないユニークさを持ったお酒に注意深く変えて行くプロセスが必要で、皆様の好みとの共通点があると思います。 昔のテキーラの(悪い飲み方の)イメージで、忘れたいような出会い方だった方も多いかもしれませんが、今日のテキーラは別物です。 多くは小規模生産になりますが、高品質のテキーラをお客様に提供し、家族や友人と分かち合うことを誇りに思うつくり手が増えています。 ※Tahona Society(タオナサイエティ) 「タオナ・ソサエティ」は、『オルメカ アルトス』の伝統的製法や、地域環境に配慮した取り組みを啓蒙するバーテンダー向けのエデュケーションプログラムです。2018年からコンセプトを刷新。 これまでのバーテンディングの技術を競うカクテルコンペティションを中心としたプログラムではなく、消費者の関心が高まっている環境や地域コミュニティに対する持続可能な社会の取り組みついて、バーテンダー自身が主体的に問題意識を持って取り組むアイディアコンペティション「タオナ・ソサエティ・コレクティブ・スピリット」として開催されました。 翻訳:松浦芳枝 輸入社 ペルノ・リカール・ジャパン株式会社 http://www.pernod-ricard-japan.com/
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