

テキーラのつくり方
テキーラの製法
アガベの栽培からボトリング、輸出(マーケティング)までの全段階で、一貫して検査機関としてのCRTへの申請・許可が必要である。
アガベアスルから株分けされた子株(イフエロ)を採取し、畑に植え替えてから収穫まで5~8年ほどかけて育てる。栽培の途中でアガベの生育状況と管理上の便宜に応じて、アガベの葉先等を剪定する作業(バルベオ)を行う場合もある。アガベの茎の部分(キオテ)は栄養分(糖分)を奪ってしまうため、伸びて花が咲く前にカットする。近年、有機栽培への動きが盛んになっている。

伝統的な職人(ヒマドール)により刃物がついた収穫専用の農具(コア)を使用して、アガベアスルの葉や球茎部(ピニャ)の皮を削ぎ落とし蒸留所に運ぶ。栽培年数やピニャのサイズ・糖度、削ぎ落とす皮の厚さは蒸留所やブランドによって異なる。アガベの葉は、そのまま畑に残し肥料として活用される。

大きなピニャは適当なサイズにカットされ、メタノールや苦みの元となるアガベの芯の部分(コゴジョ)は一般的には取り除かれる。
レンガ製のオーブン(マンポステラ)、または蒸気圧力釜(アウトクラベ)に運ばれ、8~72時間蒸し上げてピニャに含まれるイヌリン(多糖類の一種)を糖化させる。加熱せずに、酵素分解法を用いる蒸留所もある。

粉砕機(ローラーミル/シュレッダー)を用いて加水しながらアガベジュースを搾汁する。回転式の石臼(タオナ)を使う伝統的な方法や、加熱前のピニャを粉砕しベルトコンベアに乗せて、イヌリンが溶ける温度のスチームで洗浄し、高圧水で分解する大型の機械(ディフューザー)を使用する蒸留所もある。タオナを使用している蒸留所は2017年の6ヶ所から10ヶ所以上に増加。その中で今も馬を使っているところは1ヶ所のみ。

「100%アガベテキーラ」と「テキーラ」の二つのカテゴリーに分かれ、「テキーラ」の場合は、この段階でアガベジュース以外の副原料を加える。発酵前の液体は「モスト」と呼ばれ、酵母やブランドによっては発酵促進のための成分(尿素・マグネシウム、カリウム・ビタミンなど)が添加される。酵母や添加した成分は蒸留所内のラボラトリーや国内外のオフィスなどでサンプルが保管されている。

モストが酵母の働きにより発酵しアルコールが生成される。酵母の種類や様々な発酵条件によってテキーラの味が大きく左右される。酵母を人為的に加えない天然酵母での自然発酵や、搾汁後のアガベの繊維(バガス)を入れるブランドもある。ステンレスもしくは木製、コンクリート製の発酵槽を使用する。発酵槽に音楽を聴かせる蒸留所もある。発酵が終了した段階のアルコール度数6%前後の液体を「モストムエルト」と呼ぶ。
発酵段階の注意事項
①温度30~40度
②PH 3.5~6
③酵母以外の微生物による汚染がないこと

単式蒸留器(ステンレスまたは銅製)を使用する場合は、2回以上の蒸留が必要となる。連続式蒸留器のみや単式蒸留器との併用、アガベの繊維を入れて蒸留するブランドもある。ヘッドとテールは、人体に有害な成分を含み、不要な雑味を帯びているので、原則として廃棄されハート(ボディ)の部分が使用される。テールは再利用される場合もあり、Master Distillerによって決められるヘッドとテールをカットする割合がテキーラの味の要となる。
1回目の蒸留でアルコール度数20%前後のオルディナリオが抽出され、2回目の蒸留で55%前後のテキーラになる。3回蒸留するブランドもある。

蒸留後に樽熟成せずにそのまま瓶詰めされるものと、オーク樽によって熟成させるものに分かれる。樽の種類や熟成期間、樽の内側を焦がす(チャーリング)または焼く(トースティング)度合い(ライト、ミディアム、ヘビー)、熟成時のアルコール度数、貯蔵庫の温度や湿度、樽の使用回数(新樽・中古樽)等の要素が各ブランドの味わい(個性)を作り出す。

蒸留後の原酒や熟成後のテキーラをフィルターに通し、固形物などの不純物を取り除く。蒸留所によってフィルターの種類は様々で、冷却フィルターや活性炭フィルターを使う場合や、無濾過のブランドもある。

加水して度数調整をし、テキーラでボトルの内側を洗浄した後、同じクラスのテキーラをボトリングする。味をまろやかにしたり、ハーブ感を高める効果があるとされることから、ブランコのテキーラをボトリング前にステンレスタンクで一定期間寝かせたり、酸素注入を行うブランドも増えている。テキーラのボトルに定型はなく、様々なボトルのデザインがテキーラの個性の1つとなる。サニタリータイプ(Glass/PET)の新品の容器のみ使用可能であるが、容器の容量は5リットルを超えないことが規則となっている。

テキーラの製造過程で残されたアガベの繊維などは、従前そのまま破棄されていたが、近年は環境問題への取り組みから、自社でリサイクル設備の設置や技術研究を行うなどして、肥料やバイオ燃料として再利用する蒸留所が増えている。
また、アガベの葉や繊維は、紙や民芸品、化粧品などに加工したり、家具を作る材料としても活用されている。

アガベアスルとは
メキシコ国立自治大学の研究によると、200種類以上ある多肉植物の一種アガベ(別名マゲイ、リュウゼツラン・竜舌蘭、メトルなど)はメキシコを中心に米国南西部から中米にかけて自生・栽培されており、そのうちの75%はメキシコに存在する。その中でもテキーラの原材料となるアガベアスルはメキシコ固有種のアガベで、葉の表面は厚い蝋で水分が保護され、灰色味を帯びた青緑色をしている。
※正式名: Agave tequilana Weber variedad azul
※英語名: Blue Agave(Agave tequilana Weber blue variety)

特徴
イヌリン(多糖類の一種)を豊富に含む
灌漑(かんがい)は不要
1ヘクタールあたり2,800〜3,500株が栽培可能
収穫時の平均的な重量35kg
アルコール度数55%の100%アガベテキーラ 1ℓを造るのに6〜8kgのピニャが必要
成熟サイクルは平均5〜8年
栽培に適した環境要素
気温5~28℃
年間降水量600~1,800mm
中程度のきめの粘土質で水捌けの良い土壌
土壌のpH6.0~8.0
海抜600~2,500m
代表的なアガベ生産地のテロワール(土壌・気候)
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バジェス/ローランド
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地域:Tequila、Amatitan、El Arenal など
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火山灰質の水捌けが良い土壌。乾燥した暖かい気候のため、繊維質が多く、ハーバルなトーンでミネラル感のある味わいのアガベができる。
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ロスアルトス/ハイランド
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地域:Arandas、Atotonilco、Jesus Maria など
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鉄分を豊富に含む赤土の土壌。清涼で日中の寒暖の激しい気候のため、水分は多め、繊維質は少なめで、フルーティーなアガベができる。