テキーラ業界としての環境問題への取り組み「テキーラ工場からの排水浄化用化学装置を開発」

テキーラ工場からの排水浄化用化学装置を開発

出典:2021年8月3日
マリアナ・ゴンサレス=マルケス グアダラハラ大学(Universidad de Guadalajara)公報誌掲載
翻訳・解説:松浦芳枝

テキーラ工場からの排水浄化用化学装置を開発
写真:グアダラハラ大学公報誌

この装置は、汚染物質である蒸留時に生じる廃水を、現地の底土に廃棄する前に浄化する上で役立つであろう。

グアダラハラ大学トナラ研究所の研究員たちは、テキーラ工場が底土に廃棄する蒸留時に発生する廃水浄化による流域の汚染防止のための電気化学的装置を開発した。同研究所長で水・エネルギー研究学科の教授であるArturo Estrada Vargas博士によると、このプロジェクトの狙いは、NOM001に定める二つの処理プロセスを行った後に、この装置を使用して、有害な残留物の放出を避けることだとする。

写真:グアダラハラ大学公報誌

博士は、2018年以来、テキーラメーカーによる残留物排出に関するNOM001の許容度が厳格化されているが、所定の処理プロセスを実施せずに、水によって容易に希釈も分解もされない有機物を多く含む廃水を底土に放出しているケースも確認されている。

こうした残留物は生物学的手法によっては除去できず、河川の汚染に繋がっている。

このプロジェクトは文部省(SEP)からの助成金を得て、2021年末までに装置の試作品の完成を目指す。意図するところは、装置をそれぞれの廃水処理システムの中に統合して、廃水による汚染をくい止めることである。
テキーラ業界としての環境問題への取り組み
写真:グアダラハラ大学公報誌

Estrada 所長は、この電気化学的装置は、「フェントン反応」に基づき、あらゆる有機物を「鉱化」し、水に含まれる有機電荷の低減目的でそれを二酸化炭素に変換するヒドロキシルラジカル呼ばれる基を放出する仕組みであると詳述した。

テキーラでの水質モニタリング
このプロジェクトは、テキーラ町の水質評価のために、研究員たちが町役場の支援を受けて行う研究と並行して誕生した。グアダラハラ大学のEdith Xio Mara García García教授はプロジェクトの背景をこのように示した。

一次解析で湧水には汚染が見られるが、これについては第二段階で汚染源の特定をする必要があり、現場付近にゴミ捨て場があり、そこからの漏水が河川の支流に到達しているという現状がある。

研究所の所員たちは、汚染物質には多数の要因が関係しており、テキーラ工場だけがテキーラ町と周辺の自治体での主要汚染源というわけではないと断言する。

「モニタリングは継続して行く必要がある。様々な汚染物質がどこで発生してどこに向かっているかを特定するために複数箇所で測定することは興味深いだろう。」マルコ=アントニオ・デルガド=バスケス研究員はこのように述べた。
テキーラ業界としての環境問題への取り組み
写真:グアダラハラ大学公報誌

【解説】
テキーラ業界としての環境問題への取り組みについてはこれまでも報道されてきている。
Tequila Journalでも2020年4月20日付トピックでも既にその一旦が紹介されており、特にサステナビリティ(持続可能性)という概念に基づき環境対策が打ち出されていることは周知である。

今回の記事では、テキーラ蒸留所が軒を連ねるテキーラ地区とその近郊での蒸留の際に発生する「厄介な」有機物を含む汚水の問題に焦点を当てている。湧き水に汚染が検出されことを受けて、自治体がグアダラハラ大学に支援を要請したことで、研究が開始した。現地の水系に排水を放出する前に含まれる有機物をミネラル化(鉱化)するという装置の試作品がこの年末には完成が見込まれているので、今後の環境問題への更なる取り組みにも大きな影響を及ぼすものと考えられる。