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2021/03/04 ◆◆ CRM Official Mezcal Ambassador コラム◆◆テキーラとメスカル 近くて遠い関係
〜テキーラとメスカル 近くて遠い関係〜
CRM Official Mezcal Ambassador
Eduardo Belaunzarán


マゲイという同じ祖母を持つ孫同士であっても、テキーラとメスカルは同じではない。
同じ歴史と幼少時代を共有しているが、後にぞれぞれの歩む道と目的地は別々のものとなる。

昔々…
マゲイが、メソアメリカ(メキシコ及び中米北部の地域を指す歴史的名称)の人々にとって重要な資源の一つであったことは、数え切れないほどの証拠によって明らかである。
その時期に、古代先住民は既に蒸留をしていたと確言する論者もいるが、その事実関係はまだ立証されていない。

1519年からのスペインによる征服の間に、アジア、ヨーロッパとメソアメリカ土着の様式の間での文化的借用の不思議な組み合わせの先駆となる最初のアガベの蒸留が行われた。
先住民語のナワトル語で、焼いたマゲイを意味する二つの単語“Metl” (メトル)と “Izcalli” (イスカリ)が語源となったメスカルの誕生である。

植民地時代の 300年間に、使用された技術、得られた風味、材料のアガベは、生産者と消費者の物理的位置によって変化して行き、進化を続けるこのお酒はメスカルワインと命名された。
第1図:マヤウエルを表す「トナルポワリ(アステカの祭祀歴)」、『ボルボニクス絵文書』パリ、国民議会図書館所蔵

メキシコが独立した後に、このお酒はハリスコ州のテキーラで定着し、1900年には近代的なテキーラ製造産業の誕生となった。
その後、メスカルワインの名称はテキーラと簡略化されて、気候や自然環境の特徴、他のメスカルとの違いや蒸留酒としての競争力を保護された。

テキーラは対象地区に範囲を限定し、1974年に保護原産地呼称(DOP または英語で PDO)を取得した。
今日テキーラは国際的な名声を博しており、年間数億リットル以上が生産され、世界各地に輸出されている。
第2図:SAUZA家2代目当主Don Eladio Sauza時代の「メキシカンウイスキー」という呼称

他方、メスカルは、1900年には社会の表舞台から姿を消して、国内各地の村落で物々交換のための通貨として使われる他、主要なアルコール飲料としての役割を演じることになった。

国内の北から南にかけて、奥地の村落に住む人々は、独自のメスカルを生産しながらアルコール飲料の自給自足を続け、村の祭や祝い事の時または家庭内で飲まれていた。

生産者は、先祖伝来の規則だけを頑固に守り、原料のアガベは成熟していた特定の株を収穫していた。メキシコの農村の貧困の陰で、新たな種類のアガベを使って新規の技術を編み出し続け、植民地時代に見られたように時代時代の環境に適応して行った。
第3図:植民地時代のメスカル商人

1940年代になると、一部の生産者が、テキーラに追随して工業化を図り生産拡大を試みた。
そうした生産者の製品の品質は、工業化された製造方法のために非常に疑わしいものであり、飲んだ後はつらい二日酔いだけが残り、楽しい思い出には繋がらなかった。

今日の新たなメスカル産業はこの汚名を背負わされている。
しかし、メスカルは1994年に原産地呼称を取得し、初のメキシコ公式規則(NOM)の規制下に置かれた。2017年には、メスカルの持つ独自な特徴により見合った二番目の公式規則が発効した。
第4図:1983年のPlayboy誌上の広告

テキーラとメスカル:製造工程での相違
第5図:ハリスコ州のアガベアスル畑

テキーラの製造法はいくつかあるが、最も効率的で最短なのはディフューザーの使用である。
ディフューザーのシステムでは、最初にアガベを粉砕する。それから加水分解を行うために茹で上げ、硫酸液に浸けて糖分を抽出する。
酵母と発酵促進剤を制御しながらステンレス槽で発酵させる。
連続式蒸留(コラムスチル)で蒸留。
テキーラには糖分の51%以上がアガベ由来のテキーラまたは100%アガベテキーラの二つのカテゴリーがある。

もちろん、テキーラに関するメキシコ公式規則は、それ以外のいくつかの方法を許可しているので、石窯でアガベを加熱したり、タオナ(回転式の石臼)や圧搾機でピニャを搾汁し、蓋の開いた槽で(アガベの繊維であるバガスなしに)発酵させるという方法を取るブランドもある。

蒸留器については、銅製で行うブランドもあり、発酵の秘訣は天然酵母の使用にある断言するブランドもある。
ディフューザーを使用した場合、1ロットのテキーラは36時間でできる。
第6図:連続式蒸留器・ハリスコ州テキーラ

逆に、メスカルの場合は、指定産地内で栽培されるアルコールを作るのに十分に成熟した、相応な糖分を含んでいるアガベであれば、原料としてのアガベの種類を問わない。
40種類以上のマゲイが使用されている。

地中に掘った円錐形の窯、またはマンポステラ(圧力窯)でピニャを蒸し焼きにし、手作業、タオナまたは粉砕器で砕く。
蓋を開けた槽でバガスを入れて発酵させ、酵母が自然発生するのを待ち、繊維と一緒に蒸留する。
蒸留回数は、蒸留器が粘土か銅製であれば2回、フィリピン型蒸留器等であれば1回が基本である。
ここまでの工程は最低でも3週間を要する。
他方、工業的に大量生産されるメスカルはテキーラによく似た方法で製造される。
いずれの場合でも、メスカルはアガべ100%である。

テキーラもメスカルも、それぞれ群を抜いた品質を持つ基準を達成することは可能だが、当面は、対極に位置する二つの蒸留酒であるという評価に落ち着くだろう。

¡Salud!
◆筆者プロフィール◆
Eduardo Belaunzarán
エドゥアルド・ベラウンサラン


メキシコシティ出身。
友人からは”Lalo”という愛称で呼ばれている。
彼の「美食美酒(ワイン)」(”la bonne chère et des bon vin”)への情熱は、20年に及ぶパリ生活の中で育まれた。
今はアメリカ合衆国でメキシコの酒類を輸入している他、アガベ蒸留酒の専門家として活躍、Wahaka Mezcal and Back Alley Imports 社のマネージングパートナーでもある。
メキシコ全土の何世代にも渡って作られている独自で複雑な蒸留酒への情熱と知識を共有することに喜びを感じる。

アガベ蒸留酒への支援に於ける取り組みが評価されて、2018年3月にCOMERCAM(CRM)から、オフィシャルメスカルアンバサダーの大役を拝することとなった。

スペイン語のオンライン雑誌である「Gluc」のコラムニストを務め、執筆した数多くの記事小論は英語、ドイツ語、日本語に翻訳されている。
http://mezcaleando.com


訳者:松浦芳枝

注:本稿は、Gluc誌に寄稿した最新の”El Tequila y el Mezcal; diferencias y similitudes”を日本の読者向けに加筆修正した小論である。

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