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コラム

2021/08/20 ◆TASTE TEQUILA by Tequila Matchmaker◆テキーラが高騰を続ける理由
テキーラが高騰を続ける理由
出典:Why Tequila Prices Keep Climbing
TASTE TEQUILA
2021年8月5日
テキーラメーカーのオーナーへのインタビューを通じて、問題点の明確化を試みた最近の記事。
ハリスコ在住の米国人女性ジャーナリストによるブログ
翻訳・解説:松浦芳江
写真提供:TASTE TEQUILA
 
アガベの価格の高騰だけがその要因ではなく、新型コロナウイルスのパンデミックの発生に伴い、ボトル確保、ラベル印刷、製品の出荷コストの高騰により、従前の製造作業が困難になった。
「多くの工場で操業に影響が出てため、認可を得て、現場での人員削減、社会的距離の確保などをしながら制限的操業に踏み切った」とTequila El TequileñoのSteffin Ohgeneは述べた。
 
その状況は連鎖反応を起こし、多くのメーカーが新規のサプライヤーの確保に奔走した。特にガラス瓶容器は、最も入手困難のアイテムの一つであった。テキサスのパンデミックによる産業活動のシャットダウンと(今年の冬の)異常気象によりメキシコへのガスの供給が停止を受けて、メキシコのグラスメーカーの中には操業中止に踏み切った所もあり、ガラス瓶の生産高は40%減となり、瓶の生産費は上昇した。
写真提供:TASTE TEQUILA
 
また、出荷面での困難はテキーラ以外の業界にも通じる現象だが、出荷ルートの選択肢の減少と段ボール箱コンテナの入手困難に見舞われた。ダンボール価格が倍になり、木製のパレットの入手困難を受けて、プラスチック製のものを購入せざるを得なかった。EL PandilloのFelipe Camarenaはこのように示した。
ダンボール不足の理由の一部は、パンデミックでのロックダウン中になされたオンラインオーダーで既存のサプライを使い果たしたことにある。また、パレットについては 米国などでの住宅の新改築の需要急増を受けて多くの国々で木材価格が上昇した事実がある。
 
テキーラ地区で起きた建設ブームが蒸留所の作業員の不足をもたらした。Camarenaによると、アガベ農家がアガベ価格の高騰が続くことで、販売で得た潤沢な利益を住宅建設やその他のビジネスに投資するようになった。(労働力のシフトがあったと考えられる[訳者注])
銅価格の85%もの高騰が状況悪化に輪をかけることになった。単式蒸留器のポットスチルには欠かせない材料である金属は、高い需要の中でメーカーによる蒸留設備拡充刷新にとって高くついた。
 
消費の面から見ると、昨年2020年の売り上げ増は、消費パターンが外飲みから家飲みに重点が移動したことで、ショットからボトルへというシフトが見られた。テキーラの人気は依然として健在であった。
今後の需要に対応するための生産能力を確保するとして、Camarenaは 5000リットル容量のポットスチルを購入した。
写真提供:TASTE TEQUILA
 
メーカー全体としては、全面的なコスト圧力に直面したことから、生産コストの上昇の相殺のために価格引き上げを行うメーカーも出てきて、トラケパケの有名なEl Búhoでは販売するテキーラの多くが値上げに踏切り、中には20%増にも及ぶブランドも有ると述べた。その中で、El TequileñoやTapatíoは現価格を維持しつつ、今後の状況改善を望んでいる。
 
サプライチェーンの問題が解決しても、最大の悩みの種は高騰を続けるアガベ価格であり、キロ当たり27ペソ(149円弱)をつけている。Guillermo Ericson Sauza (Fortaleza)の指摘によると、容量15トンの小型オーブンを一杯にするのに10年前は1,875ドル(20万5千円強)だったのが、今では22,500ドル(246万円強)であり、10倍以上のコスト高騰が見て取れる。
パンデミックの発生で小売店が閉まったことでアガベ価格は下落するだろうという見方とは裏腹に、予想外の需要激増が起きたことでアガベ価格は高値が続いた。
 
Fortalezaでは、瓶やダンボール箱は契約済みであるのでサプライコストはまだ上昇していないが、今後変化がありうると示唆した。
 
生産コスト上昇に追い打ちをかけているのは7年以上の成熟したアガベの不足である。成熟したアガベは糖分を多く含むのでメーカーにとっては利益が多くなる。成熟したアガベの使用により、メーカーの純利益に実質的な差が出てきて、30%近くの増益が可能になる(Sauza)。
写真提供:TASTE TEQUILA
 
しかし現状では、多くのメーカーにとって入手可能なのは、アガベがちょうど最大の糖分を蓄える5、6年の時期に収穫したものである。
El Pandilloを最近訪問した折に、完熟アガベがオーブンから出てくるところに居合わせた。ピニャは表面がカラメル化していて茶色くなり、ちぎって味見をすると甘いアガベジュースが滴る。「これは本当に甘いのだよ。間違いなくいいものが得られたと思うね。」Camarenaは「アガベ高騰のこの時代にはどの詳細も大事なのさ。」と締めくくった。
 
<出典>
TASTE TEQUILAは、蒸留所やブランド情報などが検索できるテキーラ関連情報専門のスマートフォンアプリ「Tequila Matchmaker(テキーラマッチメーカー)」が運営するテキーラブランドのレビューサイトです。
https://tastetequila.com/
当コラムは、Tequila Matchmakerに転載許可をいただき、TASTE TEQUILAから配信された最新記事を日本語に翻訳し解説を加えた記事です。
 
<解説>
Alejandro Lomerín G.氏のコメント

 
記事はテキーラ業界が立ち向かう問題点の現状を的確に浮き彫りにしている。テキーラ業界は、多くの他の生産チェーンと同様に、世界的な大流行の新型コロナウイルスによって、生産活動と供給活動で一連の混乱と途絶を被ってきた。
 
実際のところ、テキーラ業界で利用されている直接材料でコストの高騰を免れた品目は一つとしてないこと、更に重大な事実は瓶・容器の深刻な供給不足を指摘する必要がある。このことはテキーラ生産に大きな足かせとなり、中小メーカの中には一時的な場合を含めて製品の供給の継続が極めて困難な状況に追い込まれたケースもあった。物がないことほど高くつくものはないからである。
 
アガベの供給に関しては、アガベの需給の慢性的不均衡は続いていることを付け加える必要があるだろう、テキーラ業界はその課題を克服できていないことから、アガベ生産での過剰と不足のサイクルが交互に出現することになる。今回の不足状況が長引いている主な理由は次の通りである。
 
1)大量のアガベを必要とし、アガベの価格に多大な圧力をかけるテキーラメーカーによる的確さを欠くアガベガ栽培計画。この状況の埋め合わせに、重量も糖分も十分ではないアガベ(4年から5年もの)の収穫を前倒しで行う。それにより、より多くのアガベが必要になり、将来の供給に「空洞」をもたらして行く。言い換えれば、「一つの井戸を塞いで、別の井戸を掘る」ことであり、少なくとも数年前から散見されている行為である。
2)もう一つの重要な側面は、100%アガベテキーラの製造・販売がテキーラの製造・販売に比してより拡大していることである。前者は、リッター当たりの生産で、後者の倍近くのアガベを必要とすることから明らかである。
 
こうした状況を前に、アガベ農家は、アガベの高価格で利益を得る状況が続いている。新型コロナウイルスの影響で操業減になる可能性が取り沙汰されて、アガベ価格への圧力を弱めるという予測も出てきたが、現実にはそのようにはならなかった。
 
*テキーラ産業は、必要不可欠な生産活動として分類され、新型コロナウイルスの影響に基づく制限措置の対象からは外れたことで、結果的に対2019年で生産増を記録した(松浦補足)。
 
プロフィール
Alejandro Lomerín Guerrero アレハンドロ・ロメリン=ゲレーロ
産業エンジニア、UAGで経営学修士号、テキーラ製造工程修士号取得(首席で課程終了)。世界的な瓶容器メーカ数社で重要ポストを歴任した後、Tequila Herradura社より招聘を受けてテキーラ業界で活動を開始。アガベ栽培を含むテキーラ製造の「全行程」で知見を広げる。現在は同社を退職し、テキーラ関係のコンサルタント及びUAG大学院でテキーラ製造工程の教育課程でのアドバイザーとして活躍している。

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