メキシコに新たな原産地呼称… 今回の主役はMolcajete(モルカヘテ)!

「魔法の村」(Pueblo Mágicoの一つであるグアナフアト州コモンフォートは、200年以上に及ぶモルカヘテの伝統的生産地としての「肩書き」を持つ。

出典El Informador

翻訳・解説:松浦芳枝

 

新たな原産地呼称が、グアナフアト州の「魔法の村」コモンフォートに誕生した。

 

サルサ・マルタハダ(トマトや唐辛子など材料を粗挽きしたサルサで食感も楽しめるを作るために使用されるどこのメキシコ人の家庭にもある「すり鉢」であるモルカヘテである。

メキシコのメルカドにあるモルカヘテ

※写真左手がモルカヘテ(グアダラハラのメルカドにて)

 

メキシコ市場で台頭しつつあった中国産のセメント製モルカヘテの脅威を前に、地元のモルカヘテ職人組合、州の経済開発省(SEDECO)とセラヤ大学が一体となって、モルカヘテの原産地呼称による保護を申請した。「これで職人は仕事を確保し、伝統を品質を保持することができます。」フアン=マヌエル・キンテロはこのように述べた。

 

コモンフォートはモルカヘテの製造加工では200年以上の伝統を誇っている。材料となる石は、ミルピージャス山方向に1時間ほど歩いた所にラス・コロラダス」という赤っぽい石が取れる鉱山で切り出している。モルカヘテとメタテ(穀物や木ノ実を磨り潰す石皿)を作る職人一家の三代目であるフアン=マヌエルは説明した。

 

彼らが使用する石は、火山岩である玄武岩質安山岩であり、含まれている小さな白い成分がコモンフォート産のモルカヘテに特有の個性を醸し出している。「これで作ったサルサは、言葉にはしにくいけれど、比類のない風味を作り出しています。」とフアン=マヌエルは示した。

 

鉱山で扱う石のブロックはとても大きく、作業には怪我などのリスクを伴うこともある。石は工房に運ぶ前にカットして手押し車やロバに乗せて運搬する。

 

コレクション用のミニチュアサイズから、コモンフォートの入り口の一つに置かれている重量2トンのモニュメントに到るまで、様々な大きさのものがある。

メキシコ伝統のモルカヘテの料理

【解説】

“Molcajete”という単語の語源は、メキシコ国立歴史人類学研究所によると、サルサ用の鉢またはモレ用の石の鉢という意味のナワトル語(mollicaxtli y temolcaxitliedra)である。サルサはメキシコ料理にとって不可欠な品目であることは言うまでもない。家庭で普及しているミキサーが手軽であるとはいえ、どこの家庭にもあると言えるモルカヘテを使って、市場などで購入した新鮮な材料を摩り下ろすことが多い。粗挽きの状態で食卓に出すことで、材料の持つ食感を楽しることに大いなる魅力があるだろう。

 

コモンフォートという町はグアナフアト州の工業都市セラヤや観光都市サンミゲルデアジェンデから車で30分ほどのところに位置している。2020年12月現在で132ヶ所ある「魔法の村」に仲間入りをした2018年であり、豊かな歴史伝統に彩られた場所である。特にメキシコ料理への拘りとして、美味しいサルサを作るために職人石を成型して作り上げたものがモルカヘテである。

 

また、原産地呼称取得品目としては、197412月のテキーラから始まり、2020年2月の18番目のオアハカ産コーヒーCafé Pluma次ぐ19品目となった。

 

<メキシコの原産地呼称取得品>

出典:CRT

 

1.テキーラ(1974)
2.メスカル(1994)
3.オリナラ(ゲレロ州)漆器(1997)
4.タラベラ(プエブラ州)焼き(1997)
5.ベラクルスのコーヒー(2000)
6.バカノラ(ソノラ州)アガベスピリッツ(2000)
7.チアパスの琥珀(2000)
8.ソトル(チワワ・ドゥランゴ・コアウィラ州)の蒸留酒(2002)
9.チアパス州ソコヌスコ地区のアタウルフォマンゴ(2003)
10.チアパス州のコーヒー(2003)
11.チャランダ(ミチョアカン州)の蒸留酒
12.ハバネロ唐辛子(2008)
13.パパントラのバニラ(2009)
14.モレロスのお米(2012)
15.グリハルバのカカオ(2016)
16.ヤワリカの唐辛子(2018)
17.ライシージャ(ハリスコ州)のアガベスピリッツ(2019)
18.オアハカ産コーヒーCafé Pluma(2020 )