テキーラ業界の環境問題への取り組みとサスティナビリティ

<テキーラ業界の環境問題への取り組み>

世界のバー業界でのトレンド・キーワードとなっているのが「サスティナビリティ」(持続可能性)という概念。テキーラ業界でも、この概念に基づく社会貢献活動や環境保全に注目している。
いち早くこの取り組みをしているブランドとして、クエルボサウザエラドゥーラカサノブレパトロンオルメカなどがあり、テキーラの製造過程で使用した原材料のほぼ100パーセントをリサイクルしている。
環境劣化・破壊への意識が低かったり、対策のための設備投資ができない蒸留所も多い中、先進的な技術のある蒸留所では、数か月かけてアガベジュースを絞った後の繊維部分(バガス)を様々な用途に向けた再利用がなされている。

エラドゥーラ蒸留所は、2008年から環境に優しい製造方針を実施し、テキーラ業界では先駆者的な役割を果たしてきている。2015年6月の「世界環境デー」時に、メキシコ政府(環境天然資源省等)より、2014年の最も優れた環境試策である“Excelencia Ambiental”を授与された。
テキーラの製造で生じる汚水の処理施設及びバガスの推肥化施設及び省エネ対策が評価され、2017年には環境当局より「クリーン産業証書」レベルⅡを授与され、新たな環境対策の開発に努力を続けている。

サウザ蒸留所は、日本の知見・技術をもとに省エネに取り組んでおり、2016年度からは、重油使用の旧式「炉筒管式ボイラー」が、天然ガス使用の「貫流ボイラー」へと置き換えられ、約30%のCO2排出量削減が実現された。また2018年度より、省エネ蒸留システムを導入、投入される蒸気使用量の半減を見込んでいる。いずれも、日本国環境省よりJCM設備補助事業案件に認定され、初期投資費用の補助を受けている。

オーガニックテキーラカサノブレは、搾汁や蒸留の際に出た排水を、川や海に排水せずに、不要な水をプールに溜め、水と繊維に分別し、水は浄水して再利用、繊維は肥料として畑に戻すという再利用を行っている。アガベの繊維を再利用して100%アガベテキーラをつくるということは、テキーラ業界でもカサノブレしかしていない取組である。

<カクテル業界の「サスティナビリティ」>

テキーラの製造現場だけでなく、カクテルを作る現場でも「サスティナビリティ」は1つの重要なトレンドとなっている。「サスティナビリティ」に基づく活動として、通常は使用しないフルーツの皮、缶詰の缶、テキーラの空きボトルなど、ゴミになってしまうものの再利用による廃棄物の削減をテキーラブランドが推奨。使い捨てのストローの代わりに、アガベの搾りかすのバガスをリサイクルしたアガベストローの使用も普及しつつある。

また、テキーラに情熱を注ぐプロのバーテンダーで構成された会員制のグローバルコミュニティ“TAHONA SOCIETY”では、新たな取り組みとして同コミュニティを主催するブランド「アルトス」のコアバリューに賛同するバーテンダーが、1.バーテンダーの福利厚生、2.社会貢献、3.アップサイクル&リサイクル、4.廃棄物の削減、5.環境の維持という5つのテーマから1つを選択し、新たなコンセプトを提案するというコンペティションを開始。2018年には21カ国が参加し、ビジネスやマーケティング・起業のプロが審査員を務める世界大会がメキシコで開催され、優勝者に5万ドルの賞金が贈呈。そのコンセプトの実現に向けて、“TAHONA SOCIETY”から継続的なサポートを受けることができる。

今後も製造現場だけでなく、カクテル業界でも「サスティナビリティ」を念に掲げる企業が増えていくことが見込まれる。